神経性無食欲症
■症状
神経性無食欲症は、軽症で一過性の場合と、重症で慢性化する場合とがあります。神経性無食欲症になる人は、きちょうめんで、強迫的な傾向があり、知的で、成績や成功に対する自己基準が非常に高い場合が多く、周囲に気づかれずに摂食障害が進行していることがあります。食事や体重をやや気にするようになるのが、最初の徴候です。神経性無食欲症になる人の大半はもともとやせているため、そのようなことを気にするのは奇異な印象があります。そして、やせればやせるほど、太っていると思いこんで不安に陥ります。衰弱してもなお、自分は太っている、体に悪いところはないと主張し、体重減少を訴えず、治療を拒みます。心配した家族に連れて来られるまで、自分から医療機関を受診することはまずありません。
神経性無食欲症という病名とはうらはらに、この障害になった人は実際は空腹で、食べもののことばかり考えています。ダイエットを研究してカロリー計算をする、食べものをためこんだり隠したりしてわざとだめにする、料理のレシピを集める、人のために手のこんだ料理を作るといった行動がみられます。神経性無食欲症の半数の人は、むちゃ食いをした後に嘔吐や下剤で食べたものを排出します。残りの半数の人は、単に食事の量を制限します。またしばしば、自分が食べた量についてうそをつき、嘔吐など食事に関係した奇妙な習慣については秘密にします。腹部膨満感があるといって利尿薬を飲む人も多くみられます。
神経性無食欲症の女性は、ときには体重がそれほど減らないうちから、月経が止まります。男女ともに、性的なことへの関心が低下することがあります。一般に、心拍数低下、低血圧、体温低下、水分貯留による組織の腫れやむくみ(浮腫)、毛髪が細く柔らかくなる、体や顔の毛が濃くなるといった症状がみられます。やせ細っても活動的で、体重をコントロールしようと過度の運動をする人も多く、衰弱するまでは栄養不良の症状はほとんどみられません。うつ病もよくみられます。
神経性無食欲症に伴うホルモンの変化としては、エストロゲン(女性の場合)と甲状腺ホルモンの著しい減少や、コルチゾールの増加があります。深刻な栄養不良の状態になると、体内のすべての主要器官が影響を受けます。体重が急激に、または大幅に減少した場合(たとえば、理想体重から25%以上の大幅な減少がみられる場合など)には、まず体重をすみやかに回復することが必要です。大幅な体重減少に伴い電解質や水分のバランスが乱れた状態になると、生命にかかわるおそれがあります。心臓の機能や、水分や電解質(ナトリウム、カリウム、塩化物イオン)に問題が生じると特に危険です。心臓が弱ると全身に血液を送り出す力が低下し、脱水状態になったり、失神しやすくなります。血液がアルカリ性になり(代謝性アルカローシス(酸塩基平衡: アルカローシスを参照)と呼ばれる状態)、血液中のカリウム値が低下します。食べたものを吐いたり、下剤や利尿薬を使用することによって、状態がさらに悪化することがあります。不整脈が原因とみられる突然死が起こることもあります。
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